岡崎律子通信
Sincerely yours, vol.6
1996 summer
 6月11日午前6時半。私はテレビ生出演を初体験しました。きゅっと心臓が縮む感じや嬉しくてはやる気持ち。
楽しかったです。そこで今までの「初めて」をいくつか思い出してみました。

 中1の夏、クラリネットで最初にまともな音が出せた日。連日の練習で唇はタラコになっていたけど嬉しかった。お初のデートは過度の緊張と過剰な期待により、無口で不自然に歩いていた感じ。今思えばフレッシュな2人だ。パン屋さんのアルバイトで初めて「いらっしゃいませ」と言ってみた朝、ズンズンと入ってきたオバサンは「どれがおいしいっ?」と聞いた。「愚問だなァ、全部だよ、全部。」と後では思ったが、あがっていてよりによって前日のサービス品の袋を指してしまった私。そして初めていただいたファンレター。顔も知らない方からの暖かいお手紙。どれほど嬉しかったかしれません。
 これからも日々、ムフフ!やとほほ…の出来事に出会うでしょう。初めてのドキドキはその時だけしか味わえなくて後でまったく同じ感じは思い出せない。毎日はその連続かもと考えると楽しくなってきます。こわがる必要はないことも学習しました。あなたもどうぞ、何事も「今だ」と思ったら迷わずGO,GOです。  岡崎律子


特別企画 岡崎律子・林原めぐみ対談
アルバム「A Happy Life」発売記念特別企画として、岡崎律子さん(以下岡崎)と林原めぐみ(以下林原)との対談をお届けします。4月26日の昼下がり、場所は新宿某所にて

◆おふたりの出会いについて◆

(岡崎)
めぐちゃんと会ったのは、ビデオアニメ「1月にはクリスマス」の主題歌を歌った時が最初。じつは今日これ 持ってきましたヨ。(といって、「1月にはクリスマス」オリジナル・サントラ盤〜'91年〜のCDを見せる)
(林原)
それそれ、そういえば今度やる役(エバァンゲリオンのレイ役)は、監督さんがこのビデオを見ていて、覚えててくれて、それで決まったの。その頃は「平成天才バカボン」(「知ってた!知ってた!」と岡崎さん)のバカボンをやったりしてたんだけど、このビデオではナイーブで内向的な女の子の役をやってて。

◆ お互いの印象は◆

(林原)
その時は確かスタジオの廊下ですれちがって挨拶した程度で、あーこの人が歌を歌う人なんだなと思っただけ。
(岡崎)
その後、その主題歌「冬のないカレンダー」を聴いためぐちゃんがいいと思ってくれて、ディレクターの大月さんに話してくれて、ミンキーモモのオリジナルストーリーCDの主題歌「4月の雪」を歌うことになったんでした。(大月さん〜キングレコード・スターチャイルド・レーベルの林原さん担当プロデューサー)わたしは、めぐちゃんのことは、いろんな意味ですごくプロだと思う。そこを尊敬している。そういえば「歌うフェアリーテール」('92年に出たミンキー・モモ・オリジナル・ミュージカル・アルバム。岡崎さんが作詞・作曲・コーラスでも参加しています)の音頭のボーカル録りの時の瞬時の早がわりにも感動したものだった。ウフフ。(笑)
(林原)
「ええだば音頭」は可愛かったよね。(「ええだば音頭」を作った時、岡崎さんがお手本で歌ったデモテープは林原さんの“笑える必聴盤”なのだとか。“ウィスパーヴォイス”の音頭で、ひとりで、手拍子も入れているのだそう。)初めて岡崎さんの歌を聴いたとき、ああこんな方法もあるのかと思ったナ。ファイト! ファイト!と叫ぶのではなくて、「北風と太陽」って思った。胸の奥にたすっと届くというか。自分の場合は第三者の立場からついついあーだこーだという歌が多いから。

◆岡崎さんが林原さんに書いた曲について◆

(林原)
「素直なきもち」(林原さんのアルバム用に岡崎さんが書いた曲)という曲を聴いた瞬間、「やられた」と思いましたね。電話でちょこっと話をしてから作ったにしても、そのとき思ってたことが、まさに歌われてて、自分の考えていること、考えていてもうまく表現できないでいることを、こうもうまく言い表されてしまうというのはなんなんだろう、と。
(岡崎)
通じてしまう瞬間というか、何かシンクロしてしまう時が、ある。通じる人と通じない人のどちらか、というのもあって、めぐちゃんとは最初からそういうものを感じていて、作るときも自然に「生まれる」感じなのです。

◆めぐちゃんのラジオについて◆

(岡崎)
わたし、めぐちゃんのラジオもよく聴いてるのね。「とんかつワイド」(臨時でパーソナリティをつとめた)の“ひとり知ってるつもり”も聴いてしまった! それで余計ファンになったりしてるんだけど。葉書で相談かあったときの答え方もとても素敵と思う。悩みや相談について話すときに、何か心がけてることがある?
(林原)
私の場合はできるだけ具体的な方法をかんがえることかな。。こうしてみたら、とか。それでダメでもいいじゃない、って。とにかく悩みから逃げない。痛みは一度乗り越えれば、同じ痛みには次から対処できるようになるでしょ。槍がぐさっと刺さっても、抜くときは痛いけど、抜いてしまえば平気になるし、それを繰り返せば強くなるもの。「わかってるけど痛いのはやだ」といわれたら仕方ないけど。(笑)わたしなんか、よく強いねーっていわれるよ。そのときは、「うん、強いよ」って答えちゃうけど、初めからこんなに強かったわけではないし、でも「強い」ってどーゆーことかは、本当の所わからないよね。よくある相談で、「どうしたら声優になれますか」っていうのがあるの。そのとき答えることは、そういう質問をしているうちは、なれないということ。本気でなろうとしている人は、もう行動を起こしてるのよね。「親の反対に遭って思うようにならない。」というのもよく聞くことだけど、要は、自分がどれくらい成りたいかということだと思う。親を説得してでもやるのか、あきらめるのか。どちらを進むかは、自分だよね。好きというのは当り前で、そのうえに実力があってという人がゴロゴロいる中で残っていかなければならないわけだから、半端なことではやっていけない世界だと思うし。

◆取材のこと◆

(岡崎)
めぐちゃんはいっぱい取材を受けてきてると思うけど、いつもどんな感じ?
(林原)
結構こまっちゃう質問ってあるよね。
(岡崎)
わたしは、歌は実話ですかというのがいちばん多いかな。あと、インタビュアーが質問をしながら、すでに自分の中に答えを用意してあって、そこへもって行こうとしているのを感じた時は、ちょっと困る。それから、相手の人が自分に興味ないのがわかると、困り果てて泣きそうになることもあったな。今は平気だけど。(笑) あと、インタビュアーが曲を聴いてくれているかいないかは、すぐわかる!
(林原)
すごく悲しいけど、アニメの雑誌の場合は作品を見ないで取材に来ることは珍しくないの。
(岡崎)
資料のとおりが掲載された時は、それだ!(笑)

◆アルバム「A Happy Life」のこと。作詞の話◆

(岡崎)
「A Happy Life」は、聴いていただいてどんなでしたか?
(林原)
アルバムのなかでは、3曲目だっけ、「ノンシャランで行こう」が一番好きかなー。この「ノンシャラン」てある言葉なの?
(岡崎)
うん、前から私には耳覚えのある言葉で、「のんき、無とんちゃく」というような意味。今回、作品として出すので辞書で確認したら、ちゃんとフランス語にありました。
(林原)
それと、「リグレット」の2番の「心の穴、泣いて泣いて、もう死ぬかと思っても、時が癒すよって本当だった、どんな涙もいつかかわくね」っていうところとかの、あまりにストレートな言い方がすごく印象的だった。詞として作り込んでないというか。わたしの場合、詞を書くときに、カッコウつけるとか、「掟」のようなものを最初はすごく意識して、ペンが止まりがちになるけれど、結局、別に飾らないで、素直に書いていいのだよね。
(岡崎)
そうそう、それが一番。(と、ふたりで納得)

◆共作について◆

(岡崎)
一度めぐちゃんと共作をしてみたいね…と、ずうっと前から言ってるのに、今だない…。
(林原)
作曲岡崎律子、作詞林原めぐみという。
(岡崎)
ずっと、大月さんには言ってきてるのだけれど。…もっと言おう。ちなみに、めぐちゃんは作るときはいつも曲が先?詞が先?
(林原)
先に曲があってというのが殆ど。大月さんからどさっと曲を渡されて、つけてみろと。それで一生懸命詞を作って見せるんだけど全部ボツだったりして。それでこの曲はボツになったからといわれて、せっかく作ったのにとか思っていると、ラジオから聴いたような曲が流れてきて、しかも全然別の詞で、違う人で。「あ、この曲、私が歌うはずだったのに」なーんてこともあったりして。
(岡崎)
それは「びっくり!」だ。共作はゼッタイ実現させよう。(ふたり誓いあう)

◆ふたりの近況と今後の予定について◆

(岡崎)
ところで、今後の予定は?
(林原)
スレーヤーズの劇場版「Just be concious」7月5日に発売になるのですが、…うへへ作詞しちゃいました。是非聞いて欲しいなー。
(岡崎)
それは、もう、すごく楽しみにしてる。私も、たてつづけにリリースのめぐちゃんを見習って、早く、頭が「作るモード」に入るよう、がんばろう。(笑)

というわけで、この後、お互いのCDにサインをしあって、対談は終了したのでした。









TOP

Copyright (C) 2004-2005 Ritzstar All rights reserved.